高松高等裁判所 昭和59年(く)22号 判決
記録により検討すると,被告人は,(1) 恐喝被疑事件(事件は2件である)により昭和59年3月3日に逮捕,同月5日に勾留され,同月19日に原裁判所に起訴され(ただし起訴されたのは2件の被疑事件のうちの1件についてのみである),(2) 同日に暴力行為等処罰ニ関スル法律違反(数人共同して器物損壊),銃砲刀剣類所持等取締法違反(けん銃所持),火薬類取締法違反(実包所持)被疑事件(事件は各2件ずつになっている)により逮捕,同月21日に勾留され,同年4月9日に原裁判所に追起訴され(ただし暴力行為等処罰ニ関スル法律違反被疑事件2件のうちの1件が建造物損壊に変更されて起訴された),(3) 次いで同年5月4日に兇器準備結集により原裁判所に追起訴されたものであるところ,原裁判所での審理の経過をみると,被告人が起訴事実全部を認めて争わず,検察官請求の証拠がすべて同意書面などとして取調べを終わり,第3回公判期日(昭和59年7月20日)に被告人側の情状関係の証拠調を終えて,検察官の論告(求刑は懲役5年)があり,次回公判期日(同年8月3日)に被告人及び弁護人の意見陳述が予定されているのであり,原裁判所が同年7月23日付き決定により,所論のような理由で弁護人の本件保釈請求を却下したのである。
ところで,被告人は,これまで多数の前科を重ねているが,その前科のうちに昭和47年1月14日に高松高等裁判所において殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反の各罪による懲役3年,及び昭和50年2月12日に高知地方裁判所において強姦罪による懲役2年の各裁判があるから,刑訴法89条2号の場合に該当することが明らかである。また本件各被告事件のうち,恐喝は,高知市内で大きな勢力を右する暴力団中井組の若頭補佐である被告人が,暴力団の活動として一般市民を被害者としたもので,犯情が極めて悪質な事件であり,被害者らの供述が重要な証拠になっているところ,被害者は被告人を極度に恐れているのであり,その余の事件は,被告人が前記中井組と対立状態にある相手方暴力団の事務所を襲撃しようと企て,共同加害の目的でけん銃などを準備するなどして輩下の組員8名を集合させ,人員を二手に分けて2か所の事務所にけん銃を発射させたという一連の犯罪であるが,警察による厳重な警戒が行われているのを知りながら,一般社会人に理解し難い暴力団特有の報復論理から,自ら主謀者となって実行したもので,社会秩序を乱すこと著しい凶悪な事件であり,被告人の意のままに動く組関係者の供述が重要な証拠になっているのである。
このような各被告事件の内容,証拠の性質,粗暴犯罪にかかる前科などを考慮すれば,証拠調を終り論告がなされたとはいえ,なお刑訴法89条4号,5号の場合に該当するとみることができるし,所論の事情を考慮しても,職権保釈を適当とは認められない。